にんげんいちねんせい

読書と横須賀ごはんについて

『昨日がなければ明日もない』に感情を乱されまくった件〜それでもやっぱり杉村三郎シリーズが好き〜

この記事は、宮部みゆきの杉村三郎シリーズについて書いています。

多少のネタバレも含みますので、ご承知おきください。 

 

杉村三郎シリーズ、大好き!

私が今年、最もハマった小説は、宮部みゆきの杉村三郎シリーズです。

今年ってまだ3ヶ月あるけど、それでもこんなにどハマりする小説は表れない!と、思っています。

3月に、シリーズ第4作目の『ペテロの葬列』を、偶然手に取ったのが私と杉村三郎シリーズとの出会い。

シリーズ物とは知らなかったため、4作目から読んでしまったのですが、めちゃくちゃ面白くて2日間で読了。

すぐにAmazonで第1作目から購入し、それから2ヶ月間ですべてのシリーズを読むほどハマった、大好きな小説です。

 

杉村三郎シリーズって?

杉村三郎シリーズとは、宮部みゆきが書くシリーズ物の小説です。

 第1作 『誰か Someday』

 第2作 『名もなき毒

 第3作 『ペテロの葬列』上下

 第4作 『希望荘』

 第5作 『昨日がなければ明日もない』

2019年10月3日現在、発売されている杉村三郎シリーズは5冊。

第1作から第3作までは長編小説、第4作と第5作は短編集となっています。

 

杉村三郎ってだれ?

このブログにたどり着いている時点で、杉村三郎のことを皆さんよくご存知かと思うのですが、念のため簡単に説明しておきます。

杉村三郎は、このシリーズの主人公。以下、三郎さんと呼ばせてください。

シリーズによって会社員の時代もあれば、探偵の時代もあります。

この主人公が、なぜだかトラブルに巻き込まれて、なぜだかトラブルの決着を付けるのが会社員時代。

探偵になってからは、持ち込まれた案件の真実に迫って行くんです。

 

 

ドラマ化もされるほどの人気シリーズ

 このシリーズ、人気のためドラマ化もされています。

主人公の杉村三郎は、小泉小太郎が演じていると聞き、妙に納得してしまいました。ハマってる…!

ドラマでは、2013年に、『誰か Someday』と、『名もなき毒』の内容が、2014年に『ペテロの葬列』の内容が放送されたようです。

テレビを観ない私は、このドラマのことももちろん知らず…

当時ドラマを観ていれば、もう少し早く杉村三郎シリーズを知れたのになぁと、悔しい思いです。

 

シリーズの魅力について

どうして私がこのシリーズにハマったのか?
⑴登場人物

やっぱり、杉村三郎という人物と、彼のまわりの登場人物の魅力が大きい!

三郎さんって、頭が良いし、性格も良いし、恐らく顔も悪くないはず。(顔については私の勝手な想像ですが)

なのに、どこか残念というか、デキる人なのに天然で勘が悪くて憎めないんですよね。

ただ聡明なだけではなくて、素直で、礼儀正しい、悪いことができないタイプの人間。

だから、この物語では、三郎さんを取り囲むまわりの登場人物がものすごく重要。

義父の今多義親や、睡蓮のマスター、三郎さんの実父に実母、兄姉に姪っ子ちゃん。

周囲の人たちに支えられながら、三郎さんが生きて行く姿が素敵です。

 

⑵読み進めたくなる推理要素

登場人物が素晴らしいって理由だけでハマる訳もなく、やっぱり小説の展開が面白いから、ハマっちゃうんですよね。

本当に流石で、先が気になって、早く読み進めたい気持ちになるんです。

 

⑶綺麗事だけじゃなく危機感を感じさせる

登場人物が魅力的だと書きましたが、魅力的な人物ばかりに囲まれて綺麗な世界観を保ったまま終わらないのが魅力の1つ。

人間の弱さや狡さ、社会の歪み、時代の変化など、自分たちの生活に溶け込む闇、自分自身の中に潜む闇について考えさせられるシリーズだと私は思っています。

 

第5作『昨日がなければ明日もない』ってどんな内容?

冒頭にもある通り、杉村三郎シリーズは大好きなんだけど、第5作が、メンタル削られる内容で…

第5作『昨日がなければ明日もない』は、2018年11月出版の、シリーズの中では最新作にあたるもの。

短編小説3部の構成になっている。

収録作品は、『絶対零度』、『華燭』、『昨日がなければ明日もない』。

帯には、杉村三郎  VS  "ちょっと困った"女たち という、そそられる文言が踊っている。

 

絶対零度』の登場人物たちに、とにかく嫌悪感しか抱かない!

ワクワクしながらページを開き、『絶対零度』を読み始めました。

が、しかし…なんだか今までとは違う、心をザワつかせる展開。

おやおや?と思いながらも、やはり続きが気になり読み進めていきます。

そして迎えた結末。

気付けば大号泣していました。

もう心の中はザワザワどころではなく、特定の登場人物に殺意まで覚える始末。

淀んだ黒い感情が湧き上がって、消化できずに眠れぬ夜を過ごしました。

次の日も仕事だっていうのに…。

 

途中放棄した

そんな感じで、『絶対零度』の余韻が酷く残っていて、その後数日はストーリーを思い出しては、落ち込んだり、心の中で怒り狂ったりと、情緒不安定な日々を過ごしていました。

絶対零度』以外に2作品が収録されている事はもちろん分かっているのだけれど、どうしても読む気にならずに、結局屠龍放棄してしまう始末。

内容を思い出すのも嫌なので、他の本とは別の場所にしまい、日常的に視界に入ってこないようにする徹底ぶりなのです。

 

なぜこんなに嫌悪感を抱いたのか?

私は考えました。なぜそんなに嫌悪感を抱いてしまったのか…

そして導き出した答え。

それはたぶん今までの作品よりも、よりリアルに、より身近に感じる設定だったから。

今までの作品も、人間や社会の闇を描かれてきたと思うのだけど、今回は登場人物と同じ時代を生きている感覚が強かった気がします。

恐らく私と同じ年代に生まれ、インターネットの普及に伴い、SNSで人と繋がる事が当たり前になっている世代。

学生時代に築かれたヒエラルキーを引き摺った雰囲気、体育会系の独特の上下関係を押し付けてくる先輩、大学を卒業して結婚しても精神的に成長しない友達や、いつまでも娘を甘えさせ続ける母親。

背景も登場人物も、ドンピシャで私の世代に当てはまりすぎていました。

「こういう人いるわ〜」「こういう事って実は身近で起こっていそう」

そう感じるから、感情移入してしまって、嫌悪感が半端なかったんだろうなぁと、今になって思います。

 

それでもやっぱり杉村三郎シリーズは魅力的

第5作はそんな感じで、引き出しの奥に葬り去って、記憶からもできるだけ消し去りたい内容(インパクト強すぎて絶対に消し去れないけど)だったのですが、やっぱり杉村三郎シリーズは大好きで、他の作品は何度も読み返しています。

だってやっぱり魅力的だから。

それなりの覚悟ができたら、『昨日がなければ明日もない』の残り2作品も読まなければ。

あぁ、杉村さん、早く幸せになってくれないかなぁ。